身体的な機能に一定以上の制約がある方、知的障害がある方、精神疾患により日常生活・社会生活に制約がある方、それぞれの状態にある方が申請することによって取得することができる「障害者手帳」。
現在皆さんが介護されている方々も、取得できる可能性があることをご存知ですか?
「取得したところで、どんなメリットがあるのか分からない。」
「障害者手帳を持ってしまったら、周りからずっと障害者として見られてしまう。そんなのは嫌だ。」
「障害と向き合い、受け入れるのは難しい。」
管理人はエッセンシャルワーカーとして障害者の支援を行っているのですが、以前障害当事者の方々やそのご家族から、このようなお話を伺ったことがありました。私自身も家族が若年性の認知症になった際に、そもそも障害者手帳を取得することが出来るのか、また取得することのメリット・デメリットは具体的にどのようなことがあるのかを思いつく限り上げて、その時の状況と手帳の取得を天秤に掛けてどちらが徳かということを考えました。
中には「障害者手帳」を取得することによる、社会的なデメリットが気になる方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、障害者手帳を取得することでどんなメリットを得られるのか、またどんなデメリットが考えられるのかを考察したいと思います。
障害者手帳には①療育手帳、②身体障害者手帳、③精神保健福祉手帳の3種類があります。
①の療育手帳は知的障害者のためのものですが、『知的障害は、「知的機能」が全般的に遅れ、日常生活に適応する機能に支障が生じる状態がおおむね18歳ごろまでに見られるもの』(=未成年者)と定義されていることから、ここでは割愛します。
心身共に健康であったものの、脳血管障害、交通事故、難病などにより突然障害を負った人のことを中途障害者という言い方をします。中途障害者はその状態によって、身体障害者手帳と精神保健福祉手帳のいずれかの手帳を取得できますが、認知症患者もまた、それぞれの障害者手帳を取得できるケースがあります。
では、具体的にどのようなものなのでしょうか。
まずは身体障害者手帳について見ていきましょう。
●身体障害者手帳
| 対象者 | 下記のいずれにも当てはまる方 ▪身体障害者福祉法で定められた身体上の障害のいずれかがある ▪身体上の障害の症状が一定程度以上で、現在から将来に渡って回復する可能性が非常に少ない |
| 障害の分類 | ①視覚障害 ②聴覚・平衡機能障害 ③音声・言語・そしゃく機能障害 ④肢体不自由(上肢不自由・下肢不自由・体幹機能障害・脳原性運動機能障害) ⑤内部障害(心臓・腎臓・呼吸器・膀胱及び直腸・小腸・HIV免疫・肝臓の機能障害) |
| 障害の等級 | 障害の程度に応じて1~6級で表されます。6級が最も障害の程度が軽く、級が上がるにつれて重たくなります。 尚、「肢体不自由」については7級も設定されていますが、障害者手帳の取得対象にはなりません。 ただし、7級程度の障害が2つ以上ある場合は、等級が繰り上がり障害者手帳の交付対象となります。 |
| 種別 | 身体障害者手帳は1種・2種に種別が分けられていますが、これはJR等の運賃減額の対象となるかどうかを判別するためのものです。 各分類と等級によって1種と2種のどちらになりますが、それにより同行する介助者が運賃割引の対象となるか否かに分かれています。 ◇JR等の割引について -第1種身体障害者が、介助者と共に乗車する場合- 要介護者・介助者ともに、JR全線の’普通乗車券’’定期乗車券’’回数券’’急行券’が5割引き(JRバスの場合は3割引き)になります。 尚、成人の場合の特例として、利用乗車距離100kmまでは自動券売機にて小児乗車券を購入して乗車することができます。 -第1種・第2種身体障害者が単独で利用する場合- 片道100kmを超える場合において、’普通乗車券’が5割引きになります。 |
| 取得方法 | ①お住まいの区市町村役場の福祉課にて、申請書類一式を入手 ↓ ②指定医療機関を受診、診断書・意見書を作成 ※身体障害者の診断書は、都道府県知事が指定した医師でないと作成することができません。脳血管障害を治療してもらった病院に作成ができるか相談してみましょう。 掛かり付け医がいない場合や作成が困難であると言われた場合は、近隣の整形外科やお住まいの区市町村の社会福祉協議会に問い合わせてみてください。 担当のケアマネージャーがいる場合には、相談すると調べてもらえると思います。 また、状態によっては手帳が交付されないこともあります。診断書・意見書の作成には費用が掛かりますので、交付の対象となりそうか、どれくらいの等級が考えられるかを医師に確認してから作成を依頼することをお勧めします。 ↓ ③区市町村役場の福祉課にて、申請 指定された書類と共に、診断書・意見書を役場に提出します。 ↓ ④審査後、交付 申請後、審査を経て障害者手帳が交付されます。 尚、場合によっては対象とならず交付されないケースもあります。 |
| 受けられる サービス | ・税制上の優遇措置 ・公共交通機関の割引(JRは身体障害者手帳・療育手帳保持者のみ) ・生活に関わる各種料金の割引 ・娯楽施設での割引 ・医療費助成 などがあります。 |
続いて精神障害者福祉手帳について見ていきたいと思います。
認知症を患ってはいるものの特に歩行に問題がない方や、脳血管障害で麻痺等の身体症状が無いものの認知機能が低下している方は、精神保健福祉手帳の取得が見込めます。
●精神保健福祉手帳
| 対象者 | 下記のような何らかの精神障害により、長期に渡り日用生活又は社会生活への制約がある方 ▪統合失調症 ▪うつ病、そううつ病などの気分障害 ▪てんかん ▪薬物依存症 ▪高次脳機能障害 ▪発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等) ▪そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等) |
| 障害の等級 | 障害の程度に応じて1~3級で表されます。3級が最も障害の程度が軽く、級が上がるにつれて重たくなります。 1級・・・ 精神障害であって、日常生活の要を便ずることを不能ならしめる程度のもの 2級・・・ 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの 3級・・・ 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの |
| 取得方法 | ①お住まいの区市町村役場の福祉課にて、申請書類一式を入手 ↓ ②精神保健指定医による診断書の作成 ※精神障害者保健福祉手帳の診断書は、精神保健指定医・精神障害の診断や治療に従事する医師でなければなりません。高次脳機能障害の治療を精神科以外の科で受けている場合は、専門の医師が記載する必要があります。 また診断書を作成してもらう為には、初診日から6か月以上経過している必要があります。 ↓ ③区市町村役場の福祉課にて、申請 指定された書類と共に、診断書を役場に提出します。 既に障害年金を受給されている方は、その証書等の写しも一緒に提出します。 ↓ ④審査後、交付 申請後審査を経て、認められると障害者手帳が交付されます。 |
| 受けられる サービス | ・税制上の優遇措置 ・公共交通機関の割引(JRは身体障害者手帳・療育手帳保持者のみ) ・公共料金等の割引 ・娯楽施設での割引 ・医療費助成 などがあります。 |
このように上げてみると、手帳を取得することで得られる金銭的なメリットを当てにしてるのかと思われる方もいらっしゃるかと思います。ですが、管理人自身はそれでも構わないと思うのです。
なぜならば、介護には物凄くお金が掛かるから。
高齢になると、まだ若い健康な人ではあり得ないような体調の崩し方をしたり、新たにてんかん等の高齢者が罹りやすい病気になったりします。障碍者手帳を取得できるレベルであれば、全介助の方や、そうでなくても自分よりも体の大きい家族を抱えて移動しなければならないケースも多く、訪問診療や訪問看護を入れている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
これらは全て管理人が経験してきたことですが、本当にお金が掛かります。退職前の年収が600万円程の場合に得られる厚生年金では、医療費と週5日の小規模多機能多機能の費用でほぼ残りません。そこに、
・お粗相した際のハイターや清掃用具(清掃用具は100円ショップにて購入。)
・季節ごとに洋服を何着か更新(洗濯や、介助時に洋服を持って持ち上げている様で、破れることが多い。主にUNIQLOで肌着・ズボン・シャツ・セーターを購入。)
・ショートカットを維持するための理美容代(直接何か言われるわけではないけれど、伸びてくると通所先で乾かすのに時間が掛かる為、煩わしいいっぽい・・・気持ちはわかる。)
・おむつ&パッド代(上限5,000円で役所からおむつやパッドの支給があるが、支給されている倍の量のおむつ、パッドを別途購入する必要がある。身体が大きい為、各商品の値段が高い。お尻拭きも1回あたりの使用量が多い。また、パッドは2種類を併用して漏れを防いでいる為、トータル月1万円は軽く超える。)
等の費用が掛かります。その他にも、食が細くなった要介護者が好んで食べる介護食を購入したり、歯科医院での定期的な口腔ケアを行ったりと、細かく上げればキリがありません。
無理なく在宅で介護を行うためには、浮かせられる分は浮かせるというのは鉄則だと思うのです。他者に手帳の取得について言及する必要なありませんし、特にデメリットは感じないというのが、管理人の率直な感想です。まだ取得されていない方は、是非検討してみてください。
